弁護士コラム

税務実務セミナーに参加しました(その2)(2020.6.18)

今回も税務実務セミナーにおいて学んだことを紹介致します。
いわゆる「期ずれ」に関する事例です。

1 「期ずれ」とは

「期ずれ」とは、本来であれば今期に計上しなければならない売上や費用が翌期に計上されていたり、逆に翌期に計上すべき売上や費用が今期に計上されていることを指します。

売上の先送りや費用の先上げはうっかりミスとしてよくあることなので、税務調査においては必ずチェックされる項目であると言われています。

2 事例

O社の社員Fさんは営業を担当しています。令和元年度のノルマとして、売り上げ100万円を課せられていたところ、無事に100万円を売り上げてノルマを達成しました。その後、決算期直前の3月に取引先のS社に対し20万円を売り上げ、Fさんは令和元年度120万円を売り上げました。

しかし、ここでFさんは考えました。「このままだと来期のノルマが130万円以上になって、来期の営業がしんどくなりそうだ。決算期直前の20万円については、来期に繰り延べてしまおう。ノルマを達成しているんだし良いだろう。」

そこで、S社の担当者Sさんとやり取りをして、来期の4月に売上げがあったものとして書類を作成したうえで、経理に回しました。

3 国税庁の方針

国税庁は、期ずれについては、以下の場合に、重加算税の対象となる方針を示しています。

  • 相手方との通謀による場合
  • 書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんが伴うものである場合

そのため、うっかりミスによる期ずれの場合は、重加算税の対象にならない可能性が高いです。

4 事例の検討

本件の場合、Fさんは、取引先の担当であるSさんとやり取りをしたうえで、うその書類を作成しています。

国税庁がこのFさんとSさんとのやり取り(メール等)を主張立証し、相手方との通謀があったと認定された場合には、Fさんに税金を逃れる目的がなかったとしても、O社には重加算税が課される可能性があります。

5 担当講師による忠告

担当講師によると、安易な期ずれが国税庁に指摘され、悪質な所得隠しであると指摘される企業が相次いでいるとのことで、危機感を共有すべきであると忠告していました。

弁護士 藤本雄也

 

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