今年の夏も、大変暑い夏です。
毎日の如く、報道では「危険な暑さ」というワードを目にし、熱中症への警戒が更に高まっている状況です。気象庁の報道では、昨年の日本の夏の平均気温は平年と比べ+1.76度と、1898年の統計開始以降125年間で最も高くなったとのことです(その前は2010年の+1.08度)。「熱中症の疑いで〇〇人が救急搬送された」というニュースも、仮に平年並みの数字であったとしても、具体的に報道されると、注意喚起として受け取ることができますね。
さて、話は変わりますが、「サマータイム」という制度、知っている方・聞いたことがある方は多いと思います。ざっくりとした説明としては、
- 日照時間の長い夏季(実際には春季~秋季初め)に標準時を一定時間早める。
- 日が昇っている時間帯が主な活動時間にシフトするため、日光を有効活用でき、エネルギーの節約にもつながる。
- 日の入り時刻が遅くなるため、相対的に余暇の時間が増え、経済活動の活発化が見込める。
といったものです。
主に北半球地域の諸国で導入・実施されている制度ですが、チリ・パラグアイ・ニュージーランド・オーストラリア(一部)といった南半球の一部の諸国でも実施されています。
筆者もざっくりとした内容しか知りませんでしたが、調べてみると色々と興味深い内容が出てきます。
1.連邦制国家は州ごとに導入の可否を決定できる
サマータイム導入国であっても、国内の全ての地域でサマータイムを実施している訳ではないようです。特に、連邦制をとるアメリカ・カナダ・メキシコ・オーストラリアでは、州単位でサマータイムを実施するかどうか決めているようで、一部の州(オーストラリアの場合は約半数)ではサマータイムが実施されていません。
2.ヨーロッパではサマータイムを廃止する法案が成立していた
「″サマータイム″と言えばヨーロッパ」というイメージがどうしても強い訳ですが、実はヨーロッパ(EU)でもサマータイムの廃止がされようとしています。具体的には、「2021年にサマータイム制度を廃止する法案」が2019年に成立しているのです。ただし、加盟諸国間の調整や協議のため、実際の廃止には至っていないという状況で、2024年時点でも実施されているようですね。
3.日本でもサマータイムが導入されていた時期がある
小中学校の社会の授業でサマータイム制度の勉強をした時、訳もなくサマータイムに憧れを抱いた筆者ですが、実は、日本でもサマータイムが導入されていた時期があったようです。
その時期は1948年(昭和23年)~1952年(昭和27年)で、「夏時刻法」という法律により施行されていましたが、公的導入はGHQの指導によるものというのが定説のようです。実は、漫画「サザエさん」(昭和21年原作スタート)にもサマータイム制度に則った生活を送っているシーンが当時描かれているんです(実際に拝見しましたが、クスリと笑える内容でした笑)。
廃止となった理由は、サンフランシスコ平和条約に基づき日本国家の主権が回復したというのが主な理由かと思われますが、制度に対する不満もかなりあったようです。
主なものとしては、
- 日の入りが遅くなったとしてもその分残業が増える(余暇の増加に繋がらない)。
- 時計のリズムではなく、天体リズムに合わせて生活する人々(農家など)にとっては、1日の生活リズムの混乱が招かれた
- 当時は、一般的なサラリーマンと公務員の出勤時間が1時間ほどずれており、時差出勤が意図的に設けられて混雑を増加させないような取り組みがなされていたが、サマータイムの導入によって公務員の出勤時間が1時間早められ、出勤時間が一致したことにより、深刻な混雑を招いた。
- トータル的に、慣習の変更を好まない意見が大多数を占めた。
といったことがあったようです。
その後、現在に至るまで、日本においてサマータイムは再導入されていない訳ですが、導入に向けた議論や、導入実験などは行われている(た)ようですね。
- 2003年7月14日~9月5日…滋賀県庁主催のサマータイム導入実験
- 2004年7月1日~31日…札幌商工会議所主催の北海道サマータイム月間
また、東京オリンピック開催時の導入も検討されていたようですが、システム面の変更が間に合わないとして結果見送られています。この点は、オリンピック時期の来訪者の活動による経済効果を狙ってということもあったのかと思うところですが、仮に導入していたとしても、新型コロナウイルスの世界的蔓延で効果は大きく落ち込んだと思われますね。
4.筆者のつぶやき
何か夏の季節にあったコラムを…と思い、サマータイムについて調べたことを書き連ねてみましたが、導入によるメリット・デメリットの両方があることは間違いなさそうです。人間というのは、自らの行動を選択する際に、数々の行動のメリットとデメリットを比較し、メリットの方が大きくなるような行動を無意識に選択するようですから、一定のデメリットがあったとしても、導入によるメリットの存在が大きくなればされる可能性は無くはなさそうです。ただし、導入国の間では、否定的な意見が多いようですね。
ちなみに筆者は、フランスの旅行中に標準時刻がサマータイムに切り替わるという何ともレア(?)な経験をしたことがあります。フランスを含めたEU諸国は、毎年度3月最終週の日曜日からサマータイムがスタートするようで、ちょうどその開始日時点でフランスに滞在していました。ユーロスターに乗るため、出発予定時刻の1時間ほど前に駅に着いたつもりが、予定の列車がすぐに出ようとしていたため、「!?」となって数秒程考えた結果、「サマータイムか!」となった訳ですね。もともと「サマータイム」という名前で制度を理解していただけに、まさか3月の末頃からスタートしているとは思いもしなかったのをよく覚えています。
現在は円安に伴う物価高の影響で、遠方の海外旅行が非常に厳しい世の中ですが、サマータイム導入国に旅行する時には気にしてみるとよいかもしれません。最も、EUではサマータイム制度を廃止する法案が可決されているので、あまり意味のないことになるかもしれませんが…。
以上、夏らしい話題の提供でした。