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所内で交通事故対応研修会(物質的損害及びその他)を行いました。(2021.9.10)

弊所では、定期的に事務員及び弁護士の研修会を開催し、知識の研鑽に取り組んでいます。

今回は、交通事故における物質的損害に対する諸対応を中心に所内で研修会を行い、対応方法や知識の再確認を行いました。

今回の研修にて確認したポイントは以下の通りです。

 

第1.経済的全損と言われた場合のポイント

1.経済的全損とは

修理費用<時価額の場合は、修理費用が賠償額となり、修理費用>時価額+買い替え諸費用の時は、時価額+買い替え諸費用が賠償額となります。この後者の取り扱いを経済的全損といいます。修理費の方が高くなってしまう場合の取り扱いは、保険会社の担当者が失念している場合があるので注意が必要です。また、相手の任意保険に対物超過特約が付いていないかを併せて確認することが重要です。

2.初年度登録から5年くらい経過した車

レッドブックで時価額を確認しますが、時価額を低く取り扱う場合が多いです。その場合は、カーセンサー等のHPで同等車種を検索し、平均値を取っての交渉を試みます。

3.希少車種で市場にない場合

正確な市場価格がなかなかないため、過去の取引事例を調査します。購入価格や海外の高級オークションの価格なども調査します。業界に精通した方の意見書を取り寄せる事もあります。

4.工業用車両(一台ずつ特注)

通常の使用期間の聴取をし、参考にします。保険会社は時価額を下げるために、減価償却を主張する場合が多いですが,普通乗用車の減価償却期間が3~5年とされるのに対し、工事用車両は20万km~100万kmほど走行可能であるため、一般の減価償却は適応されない旨主張しながら,立証を積み重ねていきます。

その他、中古買い取り業者へ査定を依頼します。

5.加害者100%の事故で全損時

時価額の支払がなされた後、加害者保険会社によって事故車両が引き取られる場合があります(損害賠償による代位)。被害者側が処分する場合にはスクラップ代が戻ってくることもありますので、被害者側が引き取れないか交渉する余地があります。

第2.評価損・格落損害請求

1.格落ち(評価損)が認められる場合について

格落ち(評価損)は、修理しても外観や機能に欠陥を生じ,または事故歴により商品価値の下落が起こり得る場合に認められます。下記の点を総合考慮して検討がなされます。(特に◎が重要)

○事故車両の車種

◎同型車の時価(高級車か否か)

◎走行距離

◎損傷の部位・程度(フレーム損傷の有無)

◎初年度登録からの期間

○修理の程度

査定書を一般財団法人日本自動車査定協会へ依頼する事もあります。

2.評価損が認められた場合の損害評価はどうなるか

通常は修理費用の10~30%です。LAC付属の資料や赤本に記載がありますが、軽微な損傷では格落ち認定は難しいです。

交渉の場合は修理費用の10%程度がほとんどです。

第3.残価設定型ローンやリース車両の賠償請求のポイント

リース車両が事故に遭った場合、所有者は会社ですが、使用者が直接の被害者となるケースが多く、請求の主体が複数体存在するため、いくつか問題が生じます。

特に、リース期間中にリース車両が全損となった場合、契約の中途解約となり、利用者が中途解約金をされたり、また、評価損が認定された場合に、その分を請求したりする場合がありますが、誰が支払うべきかについては様々な見解があります。

第4.代車の見積書に基づく請求,保険会社による代車の引上げを示唆された時のポイント 

1.代車の必要性と相当性

代車の必要性と相当性に鑑み、そもそも代車が必要なのかどうかということも問題になる場合があります。

2.時間が経過したケースで発生

事故の問題の処理に時間がかかる中で、代車の返納を求められるケースがあります。代車の提供は無期限に認められる訳ではないので、迅速な解決に向けた、依頼者の協力が不可欠な場合があります。

なお、代車に乗ったと仮定して、賠償額を貰う交渉をすることもあります。(みなし代車)

第5.労災保険や健康保険を利用すべき場合

1.過失相殺が予定されている場合

利用するかしないか依頼者に相談します。自由診療を選択した場合、診療単価が高くなり、慰謝料等の支給額が減る場合があります。

重度後遺障害や死亡時案では1桁分の減少の場合もあるため,過失があるなら労災・健保を使う事を積極的に考えます。

2.相手が無保険の場合

保険により支払われるものがないため、自己負担を強いられます。なるべく負担を抑えるためには、労災・健保利用が不可欠です。

3.加害者が不明な場合や,自賠責保険未加入の場合

  (2)に同じくですが、自らで負担をせざるを得ない場合があります。

なお、労災保険利用時は、被害者の会社の協力も必要になるため、そのことをきちんと依頼者に説明します。

業務災害,通勤災害労災の場合は,利用を積極的に考えます。

第6.健康保険を利用する手続き

1.治療先の病院に対し、健保利用を希望する旨を伝えます。

2.自分の加入している健康保険組合に報告し、第三者行為災害届と念書を取り寄せ、提出します。これらの書類が必要な理由は、後に健康保険組合から加害者に対し、被害者に給付した治療費などを請求するためです。

第7.健康保険の利用を拒む医療機関への対応

1.交通事故の受傷による診察において、健保利用をしようとする場合に、医療機関に拒まれることがあります。

2.理由としては、自由診療と健保利用とで診療単価が違い、医療機関も商売であることから,自由診療を優先する場合があることが考えられます。交通事故の受傷においても健保利用ができることは、行政通達でも周知がなされていますので、利用できないと言われたら,診療拒否として弁護士から医療機関に連絡します。

3.但しデメリットとして、

①治療が終わったら加害者に請求が行くという点

②診断書を発行してくれない事もあり,また後遺障害診断書を断ったりそれに関わる面談を断られたりする場合がある点

が挙げられます。

第8.後遺障害等級認定申請の方法

損害保険料率算出機構が調査します。

1.事前認定と被害者請求

①事前認定

加害者側任意保険会社が、被害者に代わり申請処理を行うものです。最低限の必要書類を提出すれば代わりに請求を行ってくれるため楽ですが、加害者側の任意保険会社で提出書類を取捨選択するため、真意に沿った結果が出ないこともしばしばです。

②被害者請求

被害者側で書類を集めて加害者側自賠責保険会社に直接提出して行うものです。

最低限の必要書類以外、特別定められた提出書類がないため、症状の残存に関わる資料を自由に提出できます。審査の難易度が高い時、高次脳機能障害に関わる請求の時、異議申立時等の場合には、初回から本部審査となるため、結果が出るまでに何か月もかかる場合があります。そのため、依頼者には時間を要する旨をきちんと説明する必要があります。

書類を自分で取り寄せなければならない点がありますが、交通事故証明書や診断書などは,加害者側保険会社に言えば送ってくれます。

また、損害保険料率算出機構から治療に関わるレントゲンやMRIなどの画像取り付けの依頼が来る前に画像を収集した場合,取得に掛かったお金が支払われないなど、実費に関わる細かな慣習が存在します。

2.等級認定時の保険金について

被害者請求の場合、等級認定と同時に等級毎に定められた保険金が支払われますが、事前認定の場合には、認定された等級に基づいた示談が成立した段階で初めて支払われるという違いがあります。

3.被害者請求用の書類の取付方法

被害者請求は、加害者側の自賠責保険会社に対して行います。交通事故証明書には、加害者側の自賠責保険会社名が記載されています。保険会社毎に定められた様式があり、架電することで書類を一式郵送してもらえます。弁護士事務所においては、それらをPDF化して流用しているところもあります。

第9.後遺障害等級に対する異議申立,紛争処理機構への調停の申請

1.異議申立での提出書類

後遺障害の症状が一貫して続いている,または不変である事を訴える必要があるうえで、下記の書類の提出が望ましいです。  

①神経学的所見の推移(ジャクソンテスト,スパーリングテスト)。

②愁訴(自覚症状の訴え)の一貫性が分かる記載があるカルテなど

③本人、または家族や上司の陳述書

※日常生活や就労時の動作不具合などを訴えるためです。客観的な視点がより重視されます。

④物損事故の程度が分かる資料

※物損の程度や、修理費用の金額が高いと、衝撃もそれだけ大きく、身体への甚大なダメージがあったという事が予想されるためです。

2.異議申立の回数

制限はなく、何度でも行えます。

3.紛争処理機構への調停の申請

一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構というところに調停を申し立てるという手段もありますが、こちらは一度しか行えません。そのため、異議申立の最終判断的位置付けとなりますが、最低でも一度は異議申立の行った後に申請することが望ましいです。

第10.ADR(裁判外紛争解決手続)を利用すべき場合

1.ADRを利用するメリット、場面

裁判に替わる紛争解決手続であり、原則として赤本基準を採用するため、早期に適切な基準で解決できるというメリットがあります。利用すべき場面としては以下のようなものがあります。

①交渉段階ではどうしても赤本基準の慰謝料を引き出せない場合で、依頼者の意向が強い場合

②一定の損害賠償が認められているが、休業損害の認定など、議論がありうる部分で保険会社との溝が埋まらない場合

③ドラレコや刑事記録など一定の証拠があるが、保険会社との間で過失見解に齟齬がある場合

2.デメリット

①遅延損害金が請求できない事が多いという点

②弁護士費用が請求できない事が多いという点

③複雑な案件の場合,保険会社より訴訟移行の上申書が出され,手続きが打ち切られることがあるという点

※例えば複雑難解な後遺障害を扱う事案や、信号の色など過失割合に大きな開きがあるような事案などです。

第11.そんぽADRへの苦情解決手続きと紛争解決手続きについて

1.相手損保の対応に不満がある時には、以下のような場所に苦情を申し立てることが可能です。

①担当の上司

②保険会社のカスタマーセンター

③保険業界の統括庁である金融庁

④一般社団法人日本損害保険協会(通称そんぽADR)

第12.民間調査会社の利用方法

1.交通事故の事件処理において、民間調査会社は以下のような際に利用できます。

①事故現場の図面作成,当事者のヒアリング,ドラレコ映像解析

②医療確認や意見書作成

③訴訟時などの居住確認

2.調査を依頼するには当然費用がかかりますが、弁護士特約付の場合には,費用が支払われる可能性があります。必ず弁特に利用したいと伝えて事前に確認しておくことが重要です。

第13.労災保険を利用した場合の治療記録の取付方法

1.労災保険の治療記録の取付は、保有個人情報開示請求手続となるため、代理人としての請求ができません。また、書類も本人宛に郵送されるため、依頼者の協力が不可欠です。そのほか、労災認定過程の調査報告書や、労災諸給付の既払い明細なども、同様の手続きで請求が可能となります。

 

なお、これらのポイントを含めた、交通事故に関わる様々な用語解説や、Q&Aなどを当事務所専門ページにて行っておりますので、併せてご覧ください。

 

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