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所内で交通事故対応研修会を行いました。(2021.10.7)

弊所では、定期的に事務員及び弁護士の研修会を開催し、知識の研鑽に取り組んでいます。

今回は、交通事故における適切な後遺障害の認定に焦点を当てて所内で研修会を行い、対応方法や知識の再確認を行いました。

今回の研修にて確認したポイントは以下の通りです。

第1 .後遣障害の基本

(1)後置障害について

  • 後遣障害の損害賠償は、症状固定時の残存症状(傷病名ではないことに注意)の重さに比例して決定されています。
  • 我が国では『等級』でその重さを判断する制度が採用されています。
  • 後遣障害等級は、障害の程度に応じて1級から14級、あるいは非該当に分類されます。後遺障害は交通事故損害賠償のボリュームの高い割合を占めるので、等級が付与されるか、また、何級が付与されるかは非常に重要です。

(2)後遣障害の等級の決め方

  • 労災の後遺障害認定基準に準拠しています。「労災補償障害認定必携」(労災必携、一般財団法人労災サポートセンター)の早見表がよく整理されています。
  • 等級の決め方は、「上肢」などの系列でまず分類し、その中で「上肢」と「手指」に分け、「上肢」であれば「欠損または機能障害」「変形障害」「醜状障害」といった症状別に分けられています。
  • 「上肢」の「欠損または機能障害」であれば、 1級、 2級、4級、5級、6級、8級、 10級、 12級に症状によって分けられています。該当の障害については、これ以外の等級の認定は出ません。

(3)誰が認定しているのか

  • 後遣障害の認定は、自賠責保険の損害調査を担当する損害保険料率算出機構(損保料率機構)がその業務の一環として認定しています。
  • 裁判などで後遣障害を争うことは可能ですが、示談やADRは自賠責の認定を前提としています。

(4)不服申立手段

  • 異議申立て
    →何度でも可能です。
  • 紛争処理機構(一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構)へ調停の申立て
    →一度で終結します。異議申立で覆られない場合の最終手段ですが、逆転率は10%もありません。
  • 裁判
    →自賠責の認定を優先するため、基準を覆すような根拠や説得力のある証拠が必要です。

(4)どうやって認定しているのか

  • 書面審査です。醜状障害については、面談を行ったり、基準に関わる部分について傷の長さの測定などが行われたりします。
  • 自賠責内部の認定基準に沿って認定をしていますが、内部の認定基準は公開されていません。理由としては、悪用の可能性があるからだそうです。
  • 請求手段としては2種類あります。
    • 事前認定(自賠法15条請求)
      →加害者側の保険会社が代理で請求する方法です。自分で用意する資料が最低限で済むので負担がかからないというメリットはありますが、疎明資料の選別が完全に代理人次第となりますので、意に沿わない結果が出やすいです。
    • 被害者請求(同16条請求)
      →自ら請求する方法です。資料を揃えるのが大変ですが、障害の残存を訴える資料などを自由に揃えられるため、事実に基づいた結果が出やすいと言えます。なお、弁護士に委任していれば、弁護士が代理で請求を行うため、こちらを選択した方がよいと言えるでしょう。

第2 後遣障害の不適切な認定への対応策(訴訟以外)

(1)調査事項

①事故態様の確認

交通事故被害者は、事故によって傷病を負い、残存障害が残っています。交通事故がすべての因果の起点であるので、とても重要な情報です。物損が軽微であっても人体の損傷を否定はできません。

②初期診断名の確認

一般に、整形外科的な傷病は、受傷直後が最も重く、その後回復へ向かうものとされています。受傷初期に診断名が抜けていると、受傷初期に症状がなかった、すなわち事故との因果関係がない症状であると判断されやすくなります。そのため、受傷初期に症状をきちんと主治医へ申告することが重要です。

③残存症状の発生・残存理由ははっきりしているか

画像所見や検査所見、医師の意見等が有用です。なお、頸部腰部捻挫等については、画像所見がなくとも、痛みの残存は末梢神経の異常により起こることは医学界において確立されています。

④検査結果は揃っているか

検査も目的ごとに様々ですので、症状ごとの原因究明の検査資料と、症状の重さの検査資料とが必要なケースもあります。疎明の目的に応じた検査資料を揃えることが肝要です。

⑤症状の経過

治療期間を通じて、症状は一貫性を持ち合理性があるか、当該傷病であれば通常たどるべき経過をたどっているかという点です。例えば、途中でかなり回復した後に悪化したというのは合理的説明がつかない限り問題視されます。

⑥他原因の否定

事故以外の傷病や発生原因を否定する必要性がある場合があります。医師は傷病を特定する過程で同様の症状を引き起こす傷病を除外する診断をしているケースが多いです(これ以外の原因がない、という考え方)。

(2)どこへ申立てをするか

・自賠への異議申立か、紛争処理機構への調停申立。あるいは、裁判です。

第3.訴訟で後遣障害を争う場合

(1)基本知識

①裁判所の基本的スタンス

自賠責の判断を原則として優先します。そのため、自賠責でとれるものは自賠責でとっておくべきです。後遺障害等級が認められないことに対し、安易に訴訟を考えるのは危険と言えます。

②専門的領域の因果関係を裁判所はどう判断するのか

裁判所では、確立度という概念を利用します。その専門世界で確立した考え方を裁判所は採用するということです。例えば、「画像所見がなければ痛みの発生は有り得ない」という見解は、医学界においては確立していないため、画像所見がないことを理由に痛みの残存を否定することはできません。

③因果関係の立証について~消去法的発想も重要

自ら主張する仮説の正当性のみならず、反対仮説の弾劾という視点も非常に重要となります。例えば交通事故であれば、当該症状が交通事故から発症したことの積極的な積み重ねのほか、それ以外の要因(持病、別原因の傷病)から発生したとは考えられないことの主張も重要な意味を持つことがあるということです。

(2)自賠責のルールと戦う場合の定石

・自賠責保険で適切な等級が取れない理由が、資料漏れや検査漏れ、因果関係否定等の理由であれば、十分準備した上、異議申立等で適切な等級を獲得するべきです。

・自賠責保険の認定ルールではどうやっても認定はされないが、看過できない残存症状が有る場合に訴訟を起こすという流れが重要です。

・「自賠責が言う専門的経験則は、確立しているのか」、「主治医の診断でないとしたら何から症状が出ているのか」という視点に立ち、 ルールを否定していく姿勢が重要です。保険会社がこちらの意見をもし否定するのであれば、何が原因なのかを言わせ、2択に持ち込むという戦略も可能です。

保険会社顧問医の意見書の対策。
訴訟で後遣障害を争う場合

(3)被害者のために戦え

①本当に自賠責は常に正しいか?

・モータリゼーションの発達に伴い、交通事故も公害として顕著になる中、後遺障害としての高次脳機能障害患者は20年近い間無視されていました。被害者のために正しい行動ができるのは代理人のみです。現在の自賠責基準ですら、正確ではないという声が内部からも上がっているにもかかわらず、未だ認定基準の変更がなされていません。

・自賠責基準がおかしい、裁判基準がおかしいという部分を、弁護士が戦って変えていく。自賠責基準をたたくという姿勢も重要です。

②同一部位と加重障害

・例えば、既に後遺障害の認定を受けている部位において、再度交通事故により受傷があった場合、同一部位の後遺障害が認定されるかどうかは、その障害がより重いかどうか(加重)で判断されます。なお、認定基準において、同一部位の判定は「系列」、加重は「等級」で判定されます。ただし、「神経系統の機能または精神の傷害」については系列が1つしかないため、後遺障害の有無は加重したかどうかのみでしか争えないという運用が長く続いていました。極端に言えば、もともと足の神経症状で後遺障害等級がついていた方が、新たな事故で右腕に神経症状を生じた場合、足と腕の神経症状は同一系列とされ、等級が重くならない場合は後遺障害が認定されなかったのです。

・2015年さいたま地裁判決及びこれを維持した2016年1月20日の東京高裁判決において、「同一部位とは損害として一体的に評価されるべき類型的な部位」であるという基準を立て、単に同一系列に当てはまるからという運用を打ち破りました。

 

なお、これらのポイントを含めた、交通事故に関わる様々な用語解説や、Q&Aなどを当事務所専門ページにて行っておりますので、併せてご覧ください。

 

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