令和2年6月1日に改正された労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)が施行されます。
今回の労働施策総合推進法の改正及び厚生労働省の指針では,パワーハラスメントいわゆるパワハラについて
- 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動
- 職務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害するもの
以上の3つの条件を満たすものと定めています。
そして,事業者に対しては,労働者に対する研修などにより労働者が他の労働者に対する言動に注意を払うように配慮することや,パワハラに対する方針を明確化して労働者に周知すること,パワハラに関する雇用管理上必要な措置をとるべきあるとされています。
雇用管理上必要な措置として法律上明らかにされているのは,労働者からの相談に適切に対応するために必要な体制の整備です。
厚生労働省の指針では,あらかじめ相談への対応窓口を定め,労働者に窓口について知らせた上で,相談を受けた者が人事と連携を図ることができる体制を構築することや,あらかじめ相談対応のマニュアルを作成して相談担当者がマニュアルに基づいて対応するなどの体制を整えることを事業者に求めています。
事業者が雇用管理上必要な措置を講じなかったことで労働者と紛争になった場合には,都道府県労働局長が必要な助言や指導,勧告をしたり,一方から調停の申し立てがあって紛争の解決に必要な場合には,紛争調整委員会に調停を行わせることも定められています。
また,厚生労働大臣は,事業者に対して,雇用管理上必要な措置を講じること,労働者が相談をしたり,相談への対応に協力したときに事実を述べたりしたことで不利益に扱われないようにすることについて必要な事項について報告を求めることができ,このときに厚生労働大臣に対して報告をしなかったり,虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料に処せされます。
上記の事業者の義務について,中小事業者は令和4年3月31日までは努力義務に留まっていますが,社会的にハラスメント防止の風潮が高まっていることを考えると早めに体制を整えていく方がいいかもしれません。
また,令和2年6月1日にはセクシャルハラスメントやマタニティーハラスメント防止措置について定めた改正男女雇用機会均等法も施行されます。
労働環境についてお悩みの方は是非一度、ご相談下さい。
弁護士 山本綾乃