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所内で研修会(交通事故人的損害編その1)を行いました(2021.9.6)

弊所では、定期的に事務員及び弁護士の研修会を開催し、知識の研鑽に取り組んでいます。

今回は、主に交通事故被害者の人的損害について、所内で研修会を行い、対応方法や知識の再確認を行いました。

今回の研修にて確認したポイントは以下の通りです。

第1.加害者が任意保険に加入していない場合の対応(物損・人身)

1.任意保険に加入していない=加入できる資力がないというケースが多く、加害者無資力のリスクを常に意識します。

2.依頼者が損失しないように依頼者側の保険で利用できるものがないか意識します。

(弁護士費用特約は保険料が上がりません。)

  • 車両保険、レンタカー費用特約等。
  • 人身傷害保険(相手方が無保険の場合には積極的に利用します)、搭乗者傷害保険。
  • 健康保険(自賠責の上限が120万円となっている為、慰謝料などにまわせるように健康保険を利用することを勧めます)、労災保険。

3.相手が無保険の場合、分割(1年以内)で支払可能か検討します。

第2.「物損」の事故証明書でも人身損害請求は可能

1.警察に診断書を提出しなければ、物件事故から人身事故には、ほとんどの場合切り替わりません。事故から1週間から10日程度のうちに提出すれば切り替え可能です。

2.被害者請求などする際、物件事故の事故証明書しかない場合、人身事故証明書入手不能理由書を提出する必要があります。それには、加害者の署名が必要ですが、加害者が非協力的だったり、連絡が取れなかったりする場合、被害者は事情を説明しなければなりません。

第3.整骨院に通院する場合に気をつけるポイント

1.医師の指示または同意があるか確認します。(医師が指示することはほぼないので、同意を取り付けます。)

2.将来、後遣障害等級認定申請を検討する場合に不利になることの告知が必要です。

3.骨折ではないか確認します。

柔道整復師法17条 「柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。」

4.処置部位が診断名とあっているか確認します。(事故と関係のない部位の施術を受けようとする人がいるので注意が必要です。)

5.病院にはほとんど通院せず整骨院に通う場合は、神経障害の14級9号が認定されづらい傾向にあります。

第4.眼鏡の損害は物損か人損か

結論からいえば、人身にあたります。

1.自賠責保険は人身損害を填補するものです。

2.自賠貢保険の保険金支払基準には、「医師が身体の機能を補完するために必要と認めた義肢、歯科補てつ、義眼、眼鏡(コンタクトレンズを含む)、補聴器、松葉杖等の用具の制作等に係る必要かつ妥当な実費」も支払い対象となる旨が明記されています。

3.眼鏡代(コンタクトレンズを含む)について相手損保と交渉をする場合、人身担当者と交渉することになります。

第5.事業所得者の休業損害の勘所

1.月毎やシーズン毎に大幅に変動する自営業者も多いので、算定方法は2つあります。

  (①減収額を直接認定する方法と②基礎収入額に休業日数を乗ずる方法)

2.交通事故前の申告所得額を基礎に算定するのが原則です。

所得変動がある職種の場合などには、比較的長期の平均や前年同時期の所得が考慮されるケースもあります。申告書の内容より多いと主張する人もいますが、修正申告をし、納税しない限り認められにくいです。

3.休業期間中の固定経費は損害です。

第6.高次脳機能障害について

1.ポイントは①画像所見(CT・MRI)、②意識障害の有無と程度、③症状経過と④現在の状況になります。

①について、画像撮影の機能としてはCTよりMRIの方が高いです。(CTはほとんどの事故の場合撮影されますがMRIはされないこともあります。)

④について、本人以外の家族などからの目から見てどうかがポイントになります。

2.高次脳機能障害は全件、損害保険料率算出機構の本部で審査されます。その為、結果が出るまで時間がかかります。

3.提出書類は後遣障害診断書、画像、経過診断書の他に、「日常生活状況報告書(家族などが作成)」、「頭部外傷後の意識障害についての所見(医師作成)」、「神経系統の障害に関する医学的意見(医師作成)」が必要です。

4.本人の陳述書を提出することもあります。

第7.中心性頸髄損傷と言われたときの対処

中心性頸髄損傷とは、首を急に後ろに反り返ることにより、頸随の中心部に痛みを感じる症状です。また、上肢や下肢に運動障害が発生したり、疼痛やぴりぴりするような痺れが発生したりします。

1.むち打ち症(頸椎捻挫)との違いを明確にします。

2.MRI検査により、髄内輝度変化が確認できるかどうかが大きなポイントになります。

MRIは体内の水分(T2強調画像)や脂肪(T1強調画像)を見ることができます。

3.下肢症状と比べて不釣り合いに上肢の症状が重いという特徴があります。上肢に症状を発現させる神経が中心部寄りに存在します。

4.圧倒的な神経症状の有無がポイントになります(排泄障害まで可能性があるのが頸髄損傷)。単なる痛みやしびれ程度では到底認められません。

5.画像所見がなくても医師が症状から診断を下すことがありますが、むち打ち症ではなく中心性頚髄損傷であるとする理由をしっかりと確認しなくてはなりません。

6.画像所見がないと認められにくいです。

第8.腱板断裂と言われたときの対処

自転車・バイクで転倒後、肩を受傷し、腱板断裂との診断がおりても、後遺障害非該当とされる場合があります。

1.必要な検査の実施

→MRI画像による断裂箇所の特定。
※完全断裂か不全断裂(一部)かを確認。
※不全断裂の場合、痛みが強く、夜間痛がひどい傾向にあります。

→腱板断裂の原因が事故に起因するものかどうかが重要。
①加齢、②外傷性、③摩耗(バレーボール、テニス、野球などの手を上げるスポーツ)で起り得るものである為、既往症の可能性を精査します。
したがって、依頼者に後遺障害認定について過度に期待を持たせてはなりません。

2.赤本2018年版(下巻)「肩関節~腱板断裂を中心に」を必読。

第9.人身傷害保険がある場合の訴訟基準差額説

1.人身傷害保険金を支払った場合に、保険会社が代位取得する損害賠償請求権の範囲に関する問題。

2.最高裁平成24年2月20日判決(民集66巻2号742頁)が訴訟基準差額説を採用。

人身傷害保険に関して、保険金請求者が、被保険者である被害者の過失の有無にかかわらず、裁判基準損害額を確保できるように約款解釈をするのが合理的であるとして、「保険金を支払った保険会社は、保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように、上記保険金の額と過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り、その上回る部分に相当する額の範囲で損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当。」としています。

例)過失割合が50:50、捻挫で6か月通院、治療費・通院交通費など合計した場合の裁判基準損害額(赤本基準)で120万円の場合だと仮定します。

被害者は、自分の人身傷害保険金として60万円を受領済みの場合に、被害者はさらに加害者に対していくら請求できるでしょうか?

→結論60万円。

・裁判基準損害額120万円。

・人身傷害保険で既に60万円の支払いを受けていますが、過失相殺後の損害賠償請求権も60万円(120万円×過失50%) 。

・人身傷害保険金60万円と過失相殺後の損害賠償請求権60万円を足すと120万円。これは裁判基準損害額を上回りません。したがって、被害者が最終的に確保できる金額は120万円となり、保険会社が代位する損害賠償請求権は0円となります。

(なお、裁判基準損害額を上回るか否かの比較を損害費目ごとに行うか、総額比較とするかについては、下級審レベルで見解が割れています。)

第10.赤本での傷害慰謝料計算について

1.1ヶ月30日として計算するのが原則です(保険会社はこのようにして計算します)。

2.赤本基準はあくまでも目安です。1円単位まで細かく計算で出さないといけないわけではありません。(青本では〇〇万円~〇〇万円と幅をもって記載されています。)

3.むち打ち症以外の他覚所見のない症状の場合、別表Ⅱを用いることが一般的ですが、当事務所では原則通り別表Ⅰを用いて交渉します。全身打撲では別表Ⅰで主張し、ⅠとⅡの間で認められることもあります。

 

なお、これらのポイントを含めた、交通事故に関わる様々な用語解説や、Q&Aなどを当事務所専門ページにて行っておりますので、併せてご覧ください。

 

 

 

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