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所内で研修会(交通事故人的損害編その2)を行いました(2021.9.9)

弊所では、定期的に事務員及び弁護士の研修会を開催し、知識の研鑽に取り組んでいます。

今回は、前回の研修に引き続き、交通事故被害者の人的損害について、所内で研修会を行い、対応方法や知識の再確認を行いました。

今回の研修にて確認したポイントは以下の通りです。

第1.家事従事者の休業損害の請求方法

家事従事者は、報酬相当の利益を家族に提供しているので、現金収入がなくとも、受瘍のために家事に従事できなかった期間について、休業損害を請求できます。

  1. 一人暮らしでは、家事従事者休損は請求できません。
  2. 住民票又は、家族の氏名・関係性・年齢・職業を書いた家族構成表などを提出して請求します。
  3. 算定方法は、逓減方式と通院日ベースの2つがあり、原則は通院日ベースとなります。

逓減方式…喪失率に応じて段階的に算定。(事故直後はほとんど家事ができなかったが、最後の方はできるようになっていったなど。)

通院日ベース…事故前年度平均賃金を365日で割った日額×通院日数

  1. 高齢家事従事者の場合、全年齢平均賃金ではなく年齢別平均賃金を利用して計算することが多いです。
  2. 主婦だけでなく、主夫でも認められます。

第2.被害者に減収が無い場合の労働能力喪失率の認定

  1. 減収が無くとも逸失利益を認めた判例もあります。「本人において」労働能力低下による収入の減少を回復すべく「特別の努力」をしていたなどの場合。また、勤務先の特別な配慮があったかどうかも考慮されます。
  2. 減収が無い事案で逸失利益を否定した裁判例も存在しますが少数派です。
  3. 事故前と後を比較して収入が減っている場合にその差額が逸失利益であると認める差額説もあります。

第3.労働能力への影響が問題となる後遣障害

  1. 後遺障害逸失利益の計算

原則:被害者の事故前年度基礎年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間

  1. 等級に応じた労働能力喪失率を用いるのが原則ですが、後遺障害の内容や状況に応じて賠償額が増減することがあります。
  2. 頭部・顔面・頚部以外の露出している部分の疵痕障害、外貌醜状、鎖骨変形、脊柱変形、腸骨採取による骨盤骨変形、嗅覚味覚障害、歯科補綴などが労働能力にかかわらないとして問題となる場合が多いです。だたし、変形部分に疼痛が伴う場合は、労働能力にかかわるとされます。

第4.神経症状による後遣障害等級12級・14級の分水嶺

  • 14級9号:局部に神経症状を残すもの
  • 12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの (むちうち以外の疼痛障害の最上級等級)

文言上は「頑固な」の有無。頑固度によって決まるように見えますが、頑固度の基準は存在しません。

【外傷性頸部症候群等の場合】

  • 12級13号:神経学的検査所見や画像所見などの他覚的所見により、医学的に証明しうるもの
  • 14級9号:受傷時の状態や治療の経過などから連続性・一貫性が認められ、説明可能な症状であり、単な

る故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの。

第5.加害者側保険会社の治療費支払/打ち切り後、依頼者から通院の可否を問われた場合

  1. 保険会社の治療費一括対応は、保険会社が症状固定時期と判断した時点までで終了となります。被害者側で無理矢理継続させることはできません。打ち切られた後は自費通院し、のちに裁判などで請求することは可能です。
  2. 症状固定時期について加害者側と被害者側で見解の相違がありえます。
  3. 頸椎捻挫・腰椎捻挫の約7~8割は受傷後3か月以内で症状の改善が得られるということが多いです。
  4. あと1か月など、期間を区切った一括対応延長交渉には応じる可能性はあります。
  5. どうしても通院を継続したいのであれば、健康保険や労災の利用を検討します。

第6.自賠法3条による請求の立証責任の転換と運行供用者の具体例

  1. 自賠法3条は、人身損害に関し、民法上の不法行為責任における過失の立証責任を加害者に転換し、被害者保護を図っています。加害者は過失がなかったことを主張立証できない限り賠償責任を負うことになります。
  2. 「自己のために自動車を運転の用に供する者(運行供用者)が自賠法3条の責任を負う。」すなわち、車両を運転していた加害者に限らず「車両の所有者」など、その車両の運行を管理・支配し、運行による利益を得る立場の者にも賠償責任があります。

第7.受傷疑義事案対応

  1. 受傷疑義=この程度の事故で怪我をするのか? という争い。
  2. バックで後方車両に衝突した事故や、低速度での追突事故で争われることが多いです。
  3. このような争い方に至った場合には訴訟必至。
  4. 答弁書提出と当時に文書送付嘱託でカルテを取り寄せ、工学的な鑑定書に基づく主張をしていくようになります。

第8.ケガの有無で過失相殺率が変化

【過失相殺率と過失割合の理解】

過失相殺率とは、損害賠償額の減額率に着目した概念であり、政策的配慮を踏まえた被害者の落ち度を考慮した考えです。

政策的配慮(加害者が高齢者や、危険な乗り物に乗っていたかなど)

  • 被害者保護
  • 危険責任の原則
  • 優者危険負担の原則

そのため、政策的配慮が必要のない事故では、同じ事故状況であっても過失相殺率は変化します。

第9.刑事記録の取り付け方の注意

  1. 過失相殺の解明に、刑事記録等(実況見分、供述調書など)が有用です。過去の供述と違ったことを尋問で述べている可能性などを探ります。
  2. 刑事事件で入手した資料を民事裁判で流用するのは懲戒事由になる為、改めて文書送付嘱託や23条照会で取りつけることになります。

第10.保険会社に委任状の写しを送ることについて

  1. 保険会社が受任したのかに正式に確認するためです。
  2. 保険会社が人身事故の処理において必要な場合があります。(自賠責保険に対して求償するなど)

第11.受任通知の送付方法

  1. 郵送またはFAXで送付します。
  2. 相手方保険会社については物損担当、人身担当それぞれに通知します。(実務では、片方しかわからないことも多いので、わかる方に向けて、もう一方へ伝言をお願いする形式で送付しています。)

第12.一括対応の理由

  1. 保険会社が診断書関係の書類の内容を把握する為です。
  • 不適切な治療の発見と早期防止。
  • 整骨院での施術部位の確認。
  • 整骨院は自由診療なので治療費が高額になりがちです。保険会社は自賠責に求償できる120万円の枠を気にしているので、通常の打ち切り時期より早期に打ち切られることもあります。
  1. 保険会社が適切な治療打ち切りの時期を確認する為です。
  2. 最低6か月は対応してほしいところです。むち打ちで後遺障害等級を得るためには、6か月通院しても治癒しなかったということが重要になります。

第13.人身損害の積算で赤本記載の慰謝料の8割を提示する理由

論拠はなく、そういう「内部規程」にすぎません。

「新しい交通賠償論の胎動」という書籍に、裁判などの手間があるため、慰謝料8割を交渉では目指すと記載がありますが、これは、そもそも保険会社の基準があまりに低く、8割に達しているケースが少ないため、警鐘として記述されたものです。したがって、弁護士はこれを容易に受け入れる必要はなく、妥当でないと判断したら争う姿勢も重要です。

 

なお、これらのポイントを含めた、交通事故に関わる様々な用語解説や、Q&Aなどを当事務所専門ページにて行っておりますので、併せてご覧ください。

 

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