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所内で交通事故対応研修会を行いました。(2021.10.6)

弊所では、定期的に事務員及び弁護士の研修会を開催し、知識の研鑽に取り組んでいます。

今回は、交通事故における症状固定前の不払い対応を中心に所内で研修会を行い、対応方法や知識の再確認を行いました。

今回の研修にて確認したポイントは以下の通りです。

第1 交通事故の基本的な流れ

基本的な流れは以下の通りです。

交通事故の発生→治療→症状固定(一通りの治療が行われ,これ以上改善されない状態を指す法律上の概念のことです)→残っている症状を元に後遺障害申請手続→損害賠償交渉→裁判・調停

自賠責保険,任意保険会社,人身傷害保険(約款に基づいて支払われる内容が決まります),弁護士費用特約,(業務中であれば)労災など,適切な請求先を見極めることが大切です。人身傷害保険については,請求の順序により最終的に受け取れる金額が増減するので注意が必要です。

第2 時系列でみる賠償金不払いの類型

1 治療中の支払い打ち切り

被害者に方は治療中,「単純に痛い,病院へ行かなければならない,仕事が満足に出来ない,勤務先から

解雇されるかもしれない不安,精神的に不安定,将来どうなるか分からない」などの苦痛を負っています。そのような状態で治療費や休業損害を打ち切られることにより,治療が満足に出来ず,生活も苦しくなります。

2 後遺障害の不適切な認定

後遺障害が賠償の大きな割合を占めているため,適切に認めさせることが重要です。日本では,症状固定時の残存症状により等級が決まります(1級から14級,非該当)。この等級は損害保険料率算出機構という,自賠責の損害調査を引き受けている会社が認定しています。治療中から準備を始め,適切に認定させるよう促すことが大事です。

3 不適切な賠償算定

赤本基準の慰謝料を削られたり,後遺障害の内容によっては労働能力逸失利益が認められなかったり,職業によっては収入をうまく証明できずに賠償額が下げられたりすることもあります。

第3 不払い対応総論

保険会社担当者は被害者に優しくないとよく言われますが,それは誤りです。保険会社担当者はいちサラリーマンであり,所属する保険会社のルールに従って仕事をしています。ですので,会社のルールや上司の判断などに沿って,保険会社の決裁を取りやすいように,保険会社の担当者と一緒に手続きを進める意識が大事なのです。いつまで治療費など払えば良いのか,ということを保険会社は気にするため,情報やプランの共有をおこなうことで,担当者も上司に説明しやすくなります。

第4 症状固定前の不払い①治療費の打ち切り

1 基本知識

 治療費は,加害者が必要かつ相当な実費を全額支払うという前提で,基本的には症状固定までしか認められません。

最近の接骨院・整骨院(以下接骨院等と言います)は交通事故被害者獲得に営業的です。病院よりも,接骨院等は遅くまで開いているので,利用する被害者の方が多いかと思います。現代医学では痛みを根本的に治療することは出来ませんし,病院は経過観察のみですが,接骨院等に通うと痛みが楽になったりすることもあります。以上の理由から接骨院等に通われる方も多いかと思います。しかし赤本にも書かれているように,必ずしも接骨院等での治療費が認められるわけではありません。接骨院等に通ってる場合は,主治医の指示があるかどうか必ず確認してください。そうしないと後で揉める可能性があります。

2 治療費打ち切りのパターン

(1)治療が長期化してしまっている場合

統計的に,典型的治療期間があるため,それを経過すると保険会社は治療不要と思い始めます。保険会社は主治医に問い合わせ,打ち切り打診をします。むち打ちの場合は3~4ヶ月で打ち切り打診されることが多いです。

(2)過剰・濃厚・高額診療

 診療行為が,医学的必要性ないしは合理性が否定される場合や,社会一般の診療費より高額な場合は必要性・相当性無しとして打ち切られることがあります。

例えば,頸椎捻挫においては、原則初回のレントゲンのみで事足りるのに,診療のたびにレントゲンを撮るケースなどです。

また,他の例として点数制度が挙げられます。健康保険は1点10円と定められていますが,交通事故は原則健康保険を使用しません。そうすると1点10円ではなく,病院の好きな値段を付けられます(1点20円というところが多いです)が,そうすると治療費が不釣り合いになるという問題が生じます。

 その他,主治医は頸椎捻挫と診断したにもかかわらず,接骨院等では頸椎捻挫に加え,肩・膝の治療をする(その方がお金を取れるから)ことがありますが,それは認められません。そのため弁護士が治療中の被害者の方を受任したら,「接骨院等へ通っていないか,通っている場合はレセプトで負傷部位を確認する」ということを徹底しています。

(3)因果関係否認

物損が少ない,事故から時間が経って痛くなる部位が出てきた,といった件は否認されやすいです。一般的に症状は事故直後が一番重いからです。また,精神系の症状の因果関係も事故直後には出にくいので,争われやすいです。

(4)被害者の過失割合が多い場合

 信号の色やセンターライン,0:100で双方の言い分が食い違っている場合などです。

3 典型的な治療費打ち切りまで

 保険会社は,主治医に意見を聞いた上で,一方的に時期を区切ってくることが多いです。主治医に意見を聞く方法としては,主に医療照会と医師面談が挙げられます。

4 治療費の打ち切りへの対策~主に長期化を念頭に置いて

 治療費打ち切りが起きると,今後の治療は被害者の方が払いますので,十分に治療が出来ません。また,「何故被害者なのに払わないといけないのか」というストレスを生ませることになります。そうしないためには,保険会社に打ち切りをさせないことしか方法はありません。一度打ち切られたら決裁を覆すことは相当難しくなります。

(1)依頼者を知る

まずは弁護士から,「今の症状,傷病名は何か」ということを伺います。例えば,「足の打撲と診断を受け,いつまで経っても足の痛みが引かないため,保険会社から打ち切りを打診された。しかし打撲で痛みが長引くなんてあり得ない,被害者が嘘をついているのか,本当の症状は打撲でないかのどちらかが考えられる。主治医に再検査を依頼したところ,実は骨折していた。」という事例もあります。傷病名が打撲から骨折に変わることで,このケースはその後も通院が認められました。症状と傷病名が合致しているか,という点が重要です。

また,必要な検査をしているかどうか確認することも重要です。頸椎捻挫で最初からMRIを撮影することはあまりなく,レントゲンのみの撮影で骨折はないと判断されることもあります。MRIでは軟部の異常も確認できるので,痛みが引かない場合はMRIを撮るべきです。そうすることで治療続行が認められやすくなります。

更に,弁護士は被害者の方の不安を理解することに努めます。不安が高じて病院をいくつも渡り歩こうとする被害者の方もいらっしゃいますが,そういった行為は保険会社受けが悪いです。主治医を信じられないのであればセカンドオピニオン(1箇所のみ)を推奨します。

(2)医師を知る

依頼者を通じて医師を知るのが最も多いパターンです。もしくは,弁護士自ら医師面談を通じて知るべきです。これはかなり大事なことで,必要であれば必ず医師面談へ行くべきです。ただし,診察時間中は医師も忙しいため,基本的には営業終了後に訪問します。コツとしては,最初に「私は患者の味方です。ここが困ってます。先生に教えてもらいに来ました。」という態度で,先に自身がどちらの立場の弁護士なのか伝えておきます。

また,保険会社に対し,医師から治療不要と言わせないことが大事です。診察のたびに被害者の方を通じて医療照会対策をすることも有用です。

(3)プランの共有

いつまで通院するのか,という期間を事前に決めておき,被害者の方とプランを共有しておきます。後で揉めないためにも,治療費の支払は無限ではなく,いつか保険会社が治療費を打ち切る旨,予め被害者の方へご説明いたします。

(4)それでも打ち切られた場合

保険会社が悪いので,後で治療費を請求することにし,一時的に被害者の方に立て替えていただきます。弁護士が付いていても治療費を打ち切るということは,決定的な証拠があるなど,相当自信があるということなので注意が必要です。

また,健康保険に切り替えると自賠の診断書を拒否されることもありますので,必ず事前に病院に確認します。労働中の災害であれば労災に切り替えたり,途中からは人身傷害保険から治療費をもらったりと,請求先を切り替えることも大事です。

5 因果関係不存在による治療費の打ち切りの対応策

 先ほども申し上げましたが,症状は受傷後が一番重く,時と共に軽くなっていくというのが一般的です。受傷直後のレセプトを確認すると,「傷病名にはなってなくとも,受傷直後にレントゲンを撮っている」ことが分かることがあり,その場合は「痛くないのにレントゲンを撮ることはない。」という主張が可能になります。診療記録(問診票)の開示請求をすることも視野に入れます。

 精神障害は医師に事故のせいだと言ってもらうしかないため,医師面談が必要です。

その他,物損軽微の場合は被害者加害者双方の見積書を取得します。被害者側の物損が軽微であっても,加害者側の物損被害が大きい場合もあります。保険会社は様々な実験をしているようですが,物損と人身傷害の相関関係が明確に出たという結果は聞いたことがありません。

第5 症状固定前の不払い②休業損害

1 治療中の休業損害の重要性

 貯金がある方ばかりではないため,治療が打ち切られると生活が苦しくなってしまいます。打ち切りをさせないことが基本路線です。

2 休業損害の打ち切りの典型ケース

 治療効果は一定程度見込めたとしても,軽度な稼働は可能であるという状態の方が早く訪れるため,治療費よりも休業損害の打ち切りのほうが早いです。

3 休業損害の打ち切り対策

(1)依頼者を知る

弁護士は,被害者の方はどんな仕事内容なのか,今回の怪我でどんな支障をきたしているのか,勤務先は大きいのか小さいのか,勤務先は今回の事故による復職についてどう思っているのか,今後予定されている大きな支払はあるのか,といったことを確認します。完治しないと復職が認められない職場もあるため,勤務先に一筆書いてもらうと休業損害が認められやすくなります。

(2)医師を知る

医師は患者に対し無関心なことが多いので,「自分はどういう仕事に就いていて,どうして働けないのか」ということを診療のたび被害者の方に訴えていただき,医師に関心を持たせることが重要です。そうすることで,保険会社から「もう復職可能なのでは」と後から言われたときに,医師が意見書を付けてくれる場合があります。逆に医師に復職可能と診断されたら,休業損害は一円も出なくなってしまうので注意です。

(3)プランの共有 

保険会社も,いつまでも休業損害の支払は出来ないので,復職のプランを立て,保険会社担当者を納得させることが大事です。

(4)それでも打ち切られた場合

弁護士から,健康保険の傷病手当金や保険会社へ内払いを頼んだりします。内払いは,内訳を特定せずいくらか支払を受ける制度で,怪我の程度が大きいほど認められやすくなります(例えば,片足を切断したことにより急遽家の改造が必要になり,項目を詰めていくのにも時間がかかるため内払いを請求したところ,請求が認められ、先立って1300万円の支払があった,という例もあります)。内払いでは柔軟な対応が可能です。

第6 症状固定前の不払い対応策のまとめ

 急を要している場面での治療費打ち切りは,被害者にとって切羽詰まる出来事です。そのため怒りの矛先が弁護士に向き,信頼関係が崩れることもあります。

日本では,なぜ被害者を苦しめるような保険制度が採用されているのでしょうか。フランスのように,立法によって不相当な賠償金には追徴金を課すなど,保険会社を義務づけるべきではないでしょうか。   

重要なのは,立場は違えど,保険会社は被害者の日常生活を取り戻すプロジェクトの一員であるという考え方です。弁護士は,医師の意見を元に被害者の方とプランを立て,保険会社と一緒に手続きを進めていきます。

治療は後遺障害の準備期間でもあるので,この間に出来ることは進めていきます。少し前まで,弁護士は治療中の交通事故は受任しない傾向でしたが,後遺障害を適正に検討するためにも,治療中から受任すべきだと考えます。

 

なお、これらのポイントを含めた、交通事故に関わる様々な用語解説や、Q&Aなどを当事務所専門ページにて行っておりますので、併せてご覧ください。

 

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